【クラインの壺 – 岡嶋二人 】元祖バーチャルリアリティを扱った驚愕トリック
1989年に初出版されたバーチャルリアリティを題材にした本書。20年以上前に出版されたにも関わらず、世界観は全く色褪せていない。つい先日、出版されたと言われたも全く疑問に思う余地がない程、現代の技術に適合している。
ぼくはバーチャルリアリティを扱った小説というと、森博嗣がすぐに頭に浮かぶ新本格派世代だ。今まで数々の新本格を読み続けてきたが、本書は新本格に負けず劣らずのトリックと焦燥感を齎してくれると、自信を持ってオススメできる。
クラインの壷のあらすじ
ヴァーチャルリアリティのゲーム「クライン2」を体験をすることになった主人公。ゲームの作成会社はただ単に、主人公にゲームを楽しんでもらおうと作成した訳ではなかった。ゲームにハマり込む主人公に対して、ゲーム会社は数々の罠を仕掛ける。
ラストは、綾辻行人の迷路館の殺人や、夢野久作のドグラ・マグラを彷彿とさせるような終わり方をみせる。読了後の陶酔感は前者の2作を凌駕するだろう。
クラインの壷って?
タイトルになっている「クラインの壷」とは、主に位相幾何学やトポロジーなどで使われる用語だ。表側と裏側に区別がつかない三次元のものを指す。分かりやすい例がドーナッツだ。ドーナッツの内側の這っていた蟻が、気づけば外側を這っている姿を想像して欲しい。下記が実際のクラインの壷の画だ。
ヴァーチャル・リアリティが題材ということから予想はつくだろうが、小説を読み進めるうちに段々と、ゲームの側と外側を区別できなくなってくる。タイトルが本書の結末を暗示しているといってもいいだろう。
著者の岡嶋二人って本当に二人だったのかよ・・
読んだ後に知ってビックリした。著者の岡嶋二人は、徳山諄一と井上夢人のコンビの名前で本書は共作で書かれたもの。過去に共作で作られたミステリー小説なんて聞いたことない。ちなみに、本書を境にこのコンビは解消されたそう。
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