【旅のラゴス – 筒井康隆】生涯をかけて旅をする意味と目的とは
本の内容は、主人公が生涯をかけて世界中を旅して地元に帰ってくるだけの話。内容はあり来たりではあるが、その旅の道中のエピソードやSFの要素がうまく絡み合っていて、ずっと読み続けていたいと思える本だった。
多少SFの要素はあるが、SF小説をあまり読まない自分でも楽しめた。旅って何のためにするの?という疑問を一度でも持ったことがあれば読んで欲しい。
旅のラゴスのあらすじ!
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続けるラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な世界に、人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
本書の面白いところは、主人公が旅をするごとに年を取っていき、旅の中で成長する主人公を追随できるということ。そして、年を取るということは死に近づくということでもあるので、旅の終わりも定められている。
旅に関する小説を沢山読んできたが、生涯をかけて旅する主人公にここまで感情移入出来たのは初めてだと思う。あらすじを読むだけでワクワクしてしまうのだ。
本書のもう一つの魅力であるSFの要素も面白い。瞬時に移動できる集団移転や壁の通り抜けなど、ユーモアのある超能力者が度々登場してくる。しかし現実感を失わない世界観が独特ともいえる。
ぜひ、旅中に「旅のラゴス」を読んでみてください!
主人公は目的を持って旅をしていたが、最終的にはその目的が失われ、旅中にできた他の目的のために旅をすることになる。旅の目的は固定的なものではなく、流動的なものだと認識させられます。私は本書を世界一周中に読んだのでその意味が痛いほど分かりました。ある人に取って旅は人生そのものであるし、ある人に取っては旅は現実逃避になるかもしれない。
主人公は生涯を通して旅をしていて、人生そのものが旅なんだよというメッセージを投げかけてくれます。言葉自体は抽象的ですが、各地で起こるエピソードを通じて成長していく主人公が体現しています。奴隷となった少年時代、学者として成功を収める時代、地元に戻ってきて再びに旅に出る老人時代。各エピソードを通じてラゴスの人生を俯瞰することで、メッセージの意味を痛感させられる。
本書は旅の意味を考えさせられ、尚且つ自分の人生を俯瞰するいい機会を与えてくれます。是非、旅に持っていき本書を楽しんで見てください。あらすじに惹かれたら読んでみましょう。
その他にも旅に持っていきたい本のお勧めもありますので、参考に下記の記事をどうぞ。特にアルケミストは、本書の内容と似ている部分があり面白いです。
海外旅行・バックパッカーがしたくなる旅小説10冊!
最後に本書で一番心に残った文章を残しておきます。私の好きな言葉です。
人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればいい筈だ。
旅に関するオススメの記事
旅のラゴスのテーマである、旅の目的や旅の意味などに関する記事を掲載しました。合わせて読むと旅に関する、理解度が高まると思います。一番下の記事で、私が実際に旅する意味を模索している模様が見て取れると思います。
「自分探しの旅」ではなく「自分なくしの旅」を提言したい!
テーマを持った旅・ネットを駆使した旅をする方法を解説します!
世界一周まとめ
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