【容疑者Xの献身 – 東野圭吾 】犯人に焦点を当てた倒叙ミステリーの傑作
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最近、世間で有名な大衆ミステリー小説を中心に読んでいる。自分が好きなジャンルは新本格ミステリやバカミス周辺であるが、大衆ミステリー小説を読んでいなくて損をしているなと感じることが多い。ミステリーが好きでない人も大衆的であればその名を聞いたことがある作品は意外と多い、しかもそういう人に限って「ミステリー好きなはずなのに読んでないの?」と癇に障る発言をするものだ。
東野圭吾も敬遠していた大衆ミステリー作家のうちの一人である。小説がドラマ化、映画化される作家は往々にしてトリックが稚拙で、映像でトリックが表現できる、すなわち叙述トリックはありえないものだからだ。本書は叙述トリックものではないが、犯人に焦点を当てた物語で、犯人と探偵の駆け引きが非常に面白かった。大衆小説だから・・と、読まず嫌いをしていてた自分の愚かさを痛感した。
犯人に焦点を当てた倒叙ミステリーは意外と少ない
本書のタイトル「容疑者Xの献身」通り、容疑者、即ち犯人にフォーカスが当てられる物語なのだ。様々なミステリー小説を読んできたが、初めから容疑者が特定されているものは意外と少ない。容疑者の殺人の描写が抜けていて、読者は最後のページを捲るまで容疑者がどのようなトリックを用いて犯行に及んだのか知る事はできないのだ。
倒叙ミステリーてなに!?
本書は倒叙ミステリー小説の傑作と名するに相応しい。倒叙だからこそ描ける容疑者の切ない描写が情操的なのだ。その前にだ、そもそも倒叙というキーワードが聞き慣れない方も多くいるだろう。下記に記す。
倒叙ミステリーとは、犯人の描写に焦点が当てられ、読者は犯人と犯行過程を認識した上で物語が展開される小説だ。どのようにして犯人が追いつめられていくのか、探偵と犯人のやりとりなどの描写がメインになってくる。だから、お互いの心情の描写や動機の部分に焦点が当てられることが多い。本書もそうである。
代表的な倒叙ミステリー小説はというと、エドガー・アラン・ポーの「黒猫」や江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」、ドラマの「古畑任三郎シリーズ」や「コロンボシリーズ」、「デスノート」も倒叙推理作品の傑作といえるだろう。犯人と探偵の駆け引きはスリル満載なので、コアなミステリ読者のみならず大衆的な読者や視聴者を呼び込みやすい。これが本書が売れに売れた要因の一つだろう。
【パラドックス13 – 東野圭吾】13時13分13秒に突如人類が消えた…
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