【OUT – 桐野夏生】深夜の弁当工場で働く主婦たちの犯罪
本書は文藝春秋の東西ミステリーベスト100にランクインしている。犯行から物語が始まる倒叙ミステリであり、犯人が追いつめられていく描写を社会的に描く犯罪小説でもある。
舞台が深夜の工場派遣の苦悩ということもあり、辛辣な労働条件の下で苦しむ主婦たちの描写が度々登場している。さて、そんな彼女らが犯した犯罪の行方を迫っていこう。
東西ミステリーベスト100制覇への道
OUTのあらすじ
深夜の弁当工場で働く主婦たちは、こんな暮らしから脱け出したいと日々思いながら厳しい条件下で労働をしていた。そんな中で思いもよらぬ突発的な殺人事件が起きる。死体の処理に困った彼女たちは、死体をバラバラにしてバレないように投棄することを決意した。死体投棄後は場当たり的な展開が加速する。
要約すると、弁当工場で働く主婦がストレスから突発的に殺人を犯す。仲間が死体をバラバラにして捨てる。見つかり逃げるという話。とにかく展開が早いので長編にも関わらず、数日で読みえてしまった。しかし、展開が早いだけではなく社会的メッセージが印象的だ。
低階層の苦悩と日本に潜む階層社会
来る日も来る日も工場と家を往復するだけの派遣社員、働いても働いても貯金ができないワーキングプアの現状を本書は書いている。主人公たちは、この状況からどうにか抜け出すために試行錯誤しているが、この階級を超えることはそう簡単にできることではない。どうしたら低階層から抜け出すことができるのか、まずは低階層な人たちを、大きな枠で考えていきたい。
親が低学歴&低収入。子供が育つ環境が親に依存する。同じ環境で育った相手と結婚する。その繰り返し。
これが負のスパイラルが続く要因である。世間では階層が違う相手と結婚することが騒がれたりしているが、まだまだ一般的ではない。どうしても、このボーターラインを超えるには大きな障壁がある様に思う。だからこそ「玉の輿」「逆玉」というキーワードが流行ったりもする。
この超えられない階級の壁に主人公の主婦たちは辟易してしまっているのだ。その心境は想像しただけでも心が痛む。どうにか抜け出そうと保険金目当ての犯罪や逆玉を画策するがそれも中々いかない。本書を読んで、日本には階級社会がないとは思えなくなった。
日本もアメリカと同じで、金持ちが成した社会主義を貧乏人の民主主義が支える国だと思う。この経済体制を根本的に改革するのは難しい話ではあるが、、低階級のボトムアップを計ることでなんとかできないものだろうか。この様な内容に興味がある人は本書を読んで、是非考えてみて欲しい。
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