【翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 – 麻耶雄嵩】ミステリー要素が全て集約!
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ゲルマン・ゴシックを基調とした武骨な造形の洋館。粗い煉瓦造りの側壁に半円を描いたポーチ。窓には分厚い鎧戸。前面に突き出た壁には紋章が佇んでいる。
1ページ目から陸の孤島である古城の描写だ。こてこての館シリーズを読んで育ってきた新本格世代からすると、1ページから歓喜の声を上げたくなる。こういうのを待ってましたー!と。
典型的なミステリー要素がこの本に全て集約されている。例えば、、古城、血縁関係、密室殺人、首なし死体、蘇る死者、天才肌の名探偵、オカルティズム、蓋然性の見極め、ミスリード、叙述トリックなどなど。これらの単語を聞いただけでも卒倒しそうなミステリーファンは、読了後発狂すること間違いなしである。ちなみに本書は、東西ミステリーベスト100の76位である。
東西ミステリーベスト100制覇への道
典型的なミステリー要素ベスト10
さて、本書をどのように紹介したらいいものかと考えた。出した答えが、本書を典型的なミステリー要素にあてはめて紹介するというもの。では、早速いってみよう!
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舞台はクローズドサークル、館又は城。秘密の抜け道があるとなお良い
ゴシック調の古城「蒼鴉城」が舞台。尚かつ秘密の抜け道あり。
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登場人物が多い。血縁関係を盛り込むとなお良い
主要な登場人物が20人越え。しかも血縁関係が複雑に入り組んでいる。
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殺人事件の数。殺害された人数。特徴ある殺害方法
もう訳が分からない程、バタバタ殺害されていく。しかも皆さん首なしです。
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密室殺人
もちろんあります!かなり独創的な密室に仕上がってます。
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天才肌の探偵
今まで沢山の天才探偵ものを読んできたが、本書はくせのある探偵が2名も出てくる。
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犯人が読者の想定外
そりゃ勿論、想定外でびっくらこきました。
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どんでん返し。最後にカタルシス又はカタストロフィ
こちらが本書で一番力を入れている点。結末が二転三転する。解決に近づくにつれゴールは遠くなる、トリックが氷解したと思いきや別の問題が浮上する、これの連鎖である。最終的にはアンチミステリとしてカタストロフィを食らう。
黒死館殺人事件、虚無への供物との関連について
まずは、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」との関連について。本書は黒死館殺人事件のオマージュ作品であり、建築学、異端神学・宗教学・医学・神話・歴史など広域に渡り無駄知識が顕現している。衒学趣向であり知識とトリックは必ずしも結びつくものとは限らない。最終的には黒死館殺人事件の文章をそのままコピペしている。
次に中井英夫「虚無への供物」との関連について。本書は平成の「虚無への供物」と呼称されることがある。「虚無への供物」は昭和時代の代表的なアンチミステリ作品。登場人物の数だけ犯人の候補が多くなる、登場人物が多くなると犯人の意外性を出せる。これが共通している点。
アンチフーダニット短編集!【メルカトルかく語りき – 麻耶雄嵩】
【蛍 – 麻耶雄嵩】ファイアフライ館で起こるクローズドサークル
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