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【メルカトルかく語りき – 麻耶雄嵩】アンチフーダニット短編集!

【メルカトルかく語りき – 麻耶雄嵩】アンチフーダニット短編集!

 
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帯に作者からのメッセージが込められている。これは作者からの挑発であり、ミステリファンであれば見過ごす事はできない。下記がその挑発だ。

 

「ドMなミステリファン、快感絶頂!本作ではメルカトルが色々と語ってくれます。どういうわけかメルカトルは不可謬ですので、彼の解決も当然無謬です。あしからず」

 

この挑発は「メルカトル(探偵)は間違える事はない。」という意味だ。嫌な予感を抱きながら読み進めてみたが、その予感は的中していた。古典推理小説ファンに読ませたら怒られるんじゃないか・・と思うくらいに実験的な小説だった。

本書の主人公である探偵=銘探偵・メルカトル鮎。まず名前からして怪しい。名探偵ではなく銘探偵、地図の図法であるメルカトルをなぜか名前にしてしまっている。ミステリファンであればメルカトルというと、【独白するユニバーサル横メルカトル – 平山夢明】という後味の悪い作品を想起するだろう。

まずは、本作の短編のタイトルから。ある程度、本書が何をやらかしているのか予想できるはずだ。

  • 死人を起こす
  • 九州旅行
  • 収束
  • 答えのない絵本
  • 密室荘

 

ドMなミステリファン、快感絶頂!アンチフーダニットの傑作!

では主人公である探偵=銘探偵・メルカトル鮎が何をやらかしてしまったのか説明しよう。本書は全ての短編で「アンチフーダニット」を貫き通している。ちなみに、フーダニットとは犯人特定の意味である。

そう、、本書はどの作品も犯人は特定されない。自殺ではなく絶対的に他殺である環境においても犯人は特定されない。帯にある「メルカトルは不可謬ですので,彼の解決も当然無謬です。」とは、まさにこのことを指している。

殺人解明の際にメルカトルは、感情的な憶測を一切排除している。ロジックこそが真理という持ち主なので、ロジックに合わなければ他殺であっても犯人は存在しないという結論に至る。この様な思考なので、自分自身や助手に嫌疑をかけてしまう作品もある。

ロジックから導かれたトリックは、常識の範疇から飛び出てしまっても、それが唯一絶対の真理であり、メルカトルに間違いはない。ある種のバカミス要素を取り込んだトリックであっても、メルカトルに間違いはない。リンカーンの言葉を借りれば、本書は「メルカトルのメルカトルによるメルカトルのための推理小説」なのだ。

自分が絶対というスタンスを崩さずに突き進むメルカトルには疲弊してしまうのは間違いないが、「ドMなミステリファン、快感絶頂!」というのも間違いない。

また、麻耶雄嵩で一番有名な作品である「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」を読んでいない人は合わせて読んで欲しい。次いで、「蛍」も面白い。本作も「ドMなミステリファン、快感絶頂!」なのだ。

【翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 – 麻耶雄嵩】ミステリー要素が全て集約!
本書は典型的なミステリー要素がこの本に全て集約されている。例えば、、古城、血縁関係、密室殺人、首なし死体、蘇る死者、天才肌の名探偵、オカルティズム、蓋然性の見極め、ミスリード、叙述トリックなどなど。これらの単語を聞いただけでも卒倒しそうなミステリーファンは、読了後発狂すること間違いなしである。
【蛍 – 麻耶雄嵩】ファイアフライ館で起こるクローズドサークル
大学のオカルトスサークルの6人組が、十年前に大量殺人が起こったとされる「ファイアフライ館(蛍館)」へ、肝試しに向かった。そこは10年前、作曲家でヴァイオリニストが演奏家6人を惨殺した現場だった。ふざけあうオカルトサークルの愉快な仲間たち。ファイアフライ館で最初の殺人はすぐに起きた。

犯人探し

 








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