【蛍 – 麻耶雄嵩】ファイアフライ館で起こるクローズドサークル
大学のオカルトスサークルの6人組が、十年前に大量殺人が起こったとされる「ファイアフライ館(蛍館)」へ、肝試しに向かった。そこは10年前、作曲家でヴァイオリニストが演奏家6人を惨殺した現場だった。ふざけあうオカルトサークルの愉快な仲間たち。ファイアフライ館で最初の殺人はすぐに起きた。
典型的なクローズドサークルもの
本作はあらすじからも分かるようにクローズドサークルものだ。
山奥の館にサークル仲間と遊びに行き、予期せぬ嵐が訪れ、館から出ることはできない。更に電話線が切られてしまうため外界と断絶される。正に陸の孤島である。
こういったクローズドサークルものは過去の偉人たちがいくつも出している。有名どころでは【そして誰もいなくなった – アガサ・クリスティ】【十角館の殺人 – 綾辻行人】【月光ゲーム – 有栖川有栖】などなど、ミステリー小説をあまり読まない人でも、一度は聞いたことがあるのではなかろうか。
読み進めていると「館の外界にいる人の形跡」「秘密の通路」というキーワードが散見されていて、本作は過去のトリックの二番煎じなのではないか、、と邪推してしまったが本作は麻耶雄嵩の作品。そうはいかないところがさすがである。
主観の移り変わり
主観が一人称、三人称と移りいくので読者は惑わされるが、この主観の移行こそが本作の鍵。読者は登場人物の誰の立場で読み進めていいのか分からないまま、物語は進んで行く。勘ぐくればトリックは見抜けるかもしれない。
しかし本作の最大の特徴は「読者ではなく登場人物同士で叙述トリックを繰り広げている」こと。読者側からすれば眼前に突きつけられている事実ではあるが、登場人物同士ではその事実に全く気づかない。それも主観が移行するからこそ成せる技なのだ。
物語全体を覆う複数のトリックが鮮やか。麻耶雄嵩は相変わらず面白いトリックを仕掛けてくる。これからも追いかけて行きたい作家の一人だ。
ミステリー要素が全て集約!【翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 – 麻耶雄嵩】
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